さようなら、日本一のミニ村  〜富山村、間もなく閉村〜  (愛知県)


愛知県の東三河地方北部、通称「奥三河」と呼ばれる山間部の最奥。
静岡県、長野県と境を接し、山々と湖に挟まれた急峻な場所に、
かつて「日本一人口の少ない村」として有名になった、北設楽郡富山(とみやま)村はある。
当時(昭和58年)の人口は217人。一時は199人にまで減少したが、
現在は、その後の人口の流入で219人にまで増えている。(平成16年3月現在)
日本一の座は東京都青ヶ島村(201人、平成16年9月現在)に奪われたが、
依然「本土で最少人口の村」として存在している。
この富山村が、今年(平成17年)11月27日をもって地図から姿を消してしまう。
お隣の同郡豊根村と合併するのである。

今から12年前、まだ私が原付免許しか持ってない頃、スクーターで4時間ほどかけて辿りついたのを最初に、
かれこれ7〜8回は訪れただろうか。
富山村の魅力は?と聞かれても返答に困る。
村には本当になーんにもないのだから。(温泉はあるけど)
ただ、1年に2,3回、無性に村の景色が見たくなる。富山の空気が吸いたくなる。
富山村は私にとっての癒し系的スポットなのである。

今回の訪問が、「富山村」として富山を訪れた最後になるだろう。

※以下の富山村に関する記述やデータ等は「富山村村勢要覧」(2002年)を参考にしており、
文章なども拝借しております。


↑富山村と佐久間ダム湖
かつての村中心部、河内集落は湖底に眠っている


富山のはじまりは、南北朝時代まで遡る。
戦いに敗れた源氏の落ち武者が、隠れ里として暮らし始めたのが歴史の第一歩だった。
明治9年、河内村、市原村、大谷村、佐太村が合併して、現在の富山村が誕生した。
当時の人口は450人ほどだったらしい。
村は、大正時代の日本の経済発展を背景に
まず主要産業である林業が大いに伸びた。
そして、製炭や養蚕業も盛んになり、村は大正9年、人口1496人と村史上最高を記録した。


富山村のメインストリート、主要地方道1号・飯田富山佐久間線。
村役場、郵便局、喫茶店、診療所などが集まっている。
村唯一の飲食店「コーヒーショップ栃の木」もこの付近にある。

以前は理髪店があったが、今はもうない。


しかし、昭和の戦前、戦中、戦後を通して人口は減少の一途を辿った。
そして、昭和30年、佐久間ダム完成による、村中心部河内集落などの水没によって
村民の3分の1(398人)が離村。
その後も人口流出は続き、現在に至っている。


上の写真と反対方向を見る。
右手の「千歳屋商店」は村唯一の雑貨屋さん。
村の人は、ここを利用するか、クルマで飯田市(長野県)まで出るか、
飯田線で水窪町(静岡県)まで買出しに行くそうだ。
奥の高台に見える建物は富山小中学校。



村内に平地はほとんど存在しない。
家屋は傾斜地に石垣を組むなどして建てられていて、
僅かに空いた土地で野菜を育てている。
村民の8割が自給自足のための農作物を作っている。



湖に続く斜面を利用した畑



村道が階段かよっ


こちらの村道もイケてます






村唯一の信号
村の子どもたちに「信号機」がどんなものかを
教えるため設置されたという話も・・・。
赤になったのを見たことがありません。









上の写真の「村道」をはじめ、このような路地が集落内をいくつも巡っている。
村を訪れた際は、ぜひ散策してみてください。ちょっぴり不審者に見られるかも知れませんが。
しかし、全く村の人に出くわさない・・・。



↑おなじみ主要地方道1号線 写真方向に500メートルほど進むと役場がある。 
村民の「足」はクルマか、JR飯田線大嵐(おおぞれ)駅を利用することになる。
この大嵐駅、実はダム湖(天竜川)の対岸、静岡県水窪(みさくぼ)町にあるのだ。




鷹巣橋(愛知県富山村、静岡県「旧」水窪町境)
橋を渡ると村の玄関口、大嵐駅がある。


水窪町は平成17年7月、浜松市に吸収され、
消滅しました・・・。悲しいす。


左が大嵐駅舎
以前は木造だったが、数年前、現在の
かわいらしい建物に建て替えられた。


人の気配ないすね



※大嵐駅から少し走ると、「夏焼トンネル」という不思議(?)なトンネルがあります。
夏焼トンネルの紹介はこちら。


富山村へのルートは、
1:愛知県豊根村から県道426号線で霧石トンネルを抜ける
2:静岡県佐久間町(現浜松市)から主要地方道1号線を北上する
3:長野県天龍村から主要地方道1号線を南下する
4:静岡県水窪町(現浜松市)から林道等で大嵐駅に出る
の4つがあります。

1のルートは豊根村役場から約30分の道のり、全線1〜1.5車線の峠道です。(下の写真)
みどり湖経由(県道428、429号線)で行くと、県道74号線を使うより多少時間がかかります。
どちらを使っても途中で県道426号線と合流し、富山村に向かいます。
2のルートは、初めて通る人には楽しい道のりだと思います。
佐久間ダムから連続するトンネル群は一走の価値あり!
ただ道幅が狭いわりに、大型ダンプが頻繁に走っているので注意。
新豊根ダム以北は大型車の数は減りますが、完全一車線です。
3のルートは1.5車線程度だったかな。
4のルートは未走のためわかりません。

※名古屋、豊田方面からの最短ルートを以前、村役場の方に教えていただきました。
国道153号線で長野県平谷村まで行き、国道418号線で売木村を抜け、阿南町新野で国道151号線を南下。
途中、林道?を左折。何度か右左折を繰り返して、霧石トンネル手前に出るというルートです。
遠い昔に何度か通ったのですが、かなりわかり辛く今では説明が困難です。
また、どのルートも簡単に通行止めになっちゃうような道なので、
訪れる際は、役場に問い合わせてみるのがベストでしょう。

↓以下の写真は「ルートその1」です↓

県道429号線豊根村大立付近


県道426号線 霧石トンネル(豊根村、富山村境)
この時は舗装工事が行われていた

トンネルを抜けると・・・


やってきました富山村!
しかし村の中心まではさらに20分ほどの道のり


↓以下の写真は「ルートその2」です↓
ダム湖西側の断崖を、いくつものトンネルが貫く、主要地方道1号線(豊根村)
この狭いトンネルをダンプカーが爆走してくる!
ここでは紹介できませんでしたが、富山村には湯の島温泉という小さな立ち寄り湯があります。
営業時間がかなり限定されていますので、事前に確認をしたほうが良いです。
(ちょっとした露天風呂がありますが、以前行った際は平日は開けていませんでした。)


さよなら、富山村。
村じゃなくなってもまた遊びに行きますね。


富山村役場のホームページはこちら
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